日曜日の恋衣 

青春期にあった恋愛のお話し
恋愛小説のブログです。
非現実の世界で生きるねこの
おはなし

日曜日の恋衣 3-9

ある昼下がりのことだ。その日は学会で
夕方から地方へ行くことになっていた。
久しぶりに自由な時間が数時間
取れたのだ。
近くのカフェでも食事に行くか。と行き
つけのカフェの戸を開けた。


少し間を開けて席のある空間は
一人の女性と僕のために予約されているかの
ようだった。tiねこさんがいたのだ。


すぐお互いが気づけた事は僕にとっても好都合
だった。少し大人の雰囲気に変わってはいたが
優しく潤んだ瞳は、僕を見て笑い、柔らかな君の
髪や仕草、忘れようもない唇の形、変わらないバランスの
いい体、全てが僕の欲した君のままだったのだから。。


その日は誕生日で、まひるは誕生日くらいはうちにいて
ください。と困惑していたが、tiねこさんがいなくなってから
その手のロマンス感覚は消滅していた。
連絡先を知らせれば、きっと優しいこの人は気にかけてくれる
そう知っていてその気持ちを利用した。そうしても僕は何も悪く
はないからだ。tiねこさんは案の定僕に自分の連絡先を手渡して
くれることになったのだ。そして僕の生まれた日を記憶していた
のだ。また、君と逢いたいそう願うのに時間は不要だった。


そうして昨日syuから君を取り戻した。君は恐怖で体が震えて
いたが、ぼくはまひると別れるつもりなのだ。僕がずっと傍にいて
ほしいのは今も昔も君だけなのだ。。博己君は君と一緒に僕が
責任を持って立派な人物にしていきたいのだ。それを君に伝える
前に、僕は京都へ戻り、義理の父と対面して決着をつけてくる
のだ。


京都までは君を送って高速をFxで飛ばして帰郷した。
 まず母の位牌を拝み、墓に参った。
「母さん、ごめんな。僕はまひる以外に想っている
人が昔からいるんだよ、会って欲しかったよ。優しいいい子なんだ。」
「。。。航さん。。」まひるが後ろに立っていた。。
「まひる。。」
「父には私から話します。。花楓は悲しむわ。。」まひるが泣いている。
「まひる、許してくれ。。。」
「。。いえ、気づいていたのに無理強いしたこちらにも悪があるのですから。。ただ。。」
「花楓には毎年か、花楓が会いたいと思ったときは父親として会ってほしいことと、あと
。。」
それは壮絶な事実だ。。まひるは僕と婚姻関係を結ぶ前に、義理父の病院の既婚医師との
不倫関係にあり、花楓はその医師との子供だと告げられた。
「お互い目を閉じ合おう」と義理父は唸った。
そして半年後、無事まひるとの離婚が成立した。


君はあの日からきっと僕を思い出して、syuと博己君とのことを
思い苦しんでいるだろう、早く君を安心させたいんだ。それだけのために
こんなに回り道をしている。後はsyuに分って貰えたら君とはずっと
あの日のままいられるのだ。。






日曜日の恋衣 3-8

花の森に引っ越した後に親父が
まひるが来るから会うようにと連絡を
寄こすようになった。
「研修や勤務で忙しい」
と逃げていたが、とうとうまひるの両親と
も会食すらする事になりもうどうやら逃げら
れないと観念した。
tiねこさんは、あれからsyuと交際をし無事に
結婚し一児の母になるそうだから、もう追うこと
はあるまいと思うのだ。


京都の格式のある寺での神前式と披露宴、母の不在が
偲ばれたが壮大なものだったと記憶している。
前日まで東京で勤務して駆け付けたのだ。まひるの
衣装や表情も思い出せない、考えたのはまひるの代わりに
彼女がいる幻想だった。
新婚旅行もかねてからまひるが行きたがっていたイギリスだ。
なぜイギリスか何度か小声で話すまひるの声がひとしきり
遠い世界にあり、tiねこさんが目に前に笑う現実に生きていた。
これが世にある未練の感慨かと国際線の帰国途中にふと気づいた
ものだ。甘美な時間をくれる女性は今後も現れそうな気がしたが
柔らかな羽根をもったねこは彼女だけなのだ。全力を込めてそう
思わずに今後生き残れそうもない世界にまひるは僕を連れて行こう
としていた。

日曜日の恋衣 3-7

東京に戻った僕が真っ先に向かったのは
tiねこさんの住む家だった。心底憔悴しきって
いた。彼女は相変わらず自炊をしていて、ほと
んどのものが手作りで彼女の優しい味がした
のだ。何も知らない君は、僕を見ていつもみたいに
笑ったし、疲れている僕を癒してくれた。それだけ
でも十分なのに、寝顔の君はそれ以上に甘美な時間
を僕に与えてくれ、暫し君の翼をかりて大空を弧を
描いて羽ばたく自分になれたのだ。
tiねこさんに多くを語らなかったのは、syuと僕の間で
悩んでいることを知っていたからだ。syuにもあまり
ストレスを与えないことを別れの約束にしていた。
まひるには残酷なことかもしれないが、僕はtiねこさん
にプロポーズをする、そう決意を固めていたのだ。
だが、とある日曜を境に世界は一変するのだ。
syuが僕から君を奪い去ることになったのだから。
堪ったものではなかったと今も思うことがある位だ。
昨夜は、思わず彼女の前でも本音が出てしまったが
結果的に彼女の未だに純粋な心を自分の物に出来たの
だからそれももう言わないでおこう。。