日曜日の恋衣 

青春期にあった恋愛のお話し
恋愛小説のブログです。
非現実の世界で生きるねこの
おはなし

日曜日の恋衣 3-6

そんな時だ。京都から連絡があり
母が倒れたのだ。まひるが連絡してくれた
頃には、かなり悪化し手遅れだというしかない
状態だった。脳梗塞だ。絶望的な事態と親父の悲
しそうな疲れた顔はずいぶん年老いて見えた。
「なあ、航。。」
「どうしたんだ。教えてくれよ、家族だろ。」
「母さん、お前とまひるさんがずっと一緒になるの
楽しみにしてたんだ。」
「どうしてまひるなんだ?僕にも思う相手はいるんだぞ。」
親父の言いたいことは百も承知だ。まひるは、先天性心臓
疾患を抱えてはいるが、父親は京都有数の総合病院を牛耳る
経営者であり、偉大なる医師なのだ。容姿は平凡だが、権力
のある名家資産家の令嬢には違いないし、開業するならまひる
を選べば、将来は安泰だろう。。
「まひるさんのおかげで何とか一命を取り留めたが。。これからも
母さんを看てくれるというんだ。。病院が付いていれば母さんも
安泰な気がしないか?いつもまひるさんといたじゃないか。。」
「まだ試験に合格したばかりだ。そんなこと考えられない」
そういうと親父は観念したように
「いつかお前にも分る時が来る、その時はまひるさんを幸せに
してあげるんだ。人の情愛とはそういうものだ。。」
そうして容体はまひるの父親の病院の医事の中で回復したかのように
見えたが、1年後に様々な後遺症が合併して、その間休学したが無念
ながら再発してこの世を去ったのだ。
「航。。まひるさんと幸せにね。。」
そう言って目を静かに閉じた母の使命に逆らえたなら僕は感情を
情愛を知らずに済んだだろうか。。

日曜日の恋衣 3-5

その後も彼女は僕の直ぐ傍にいて
満足したように楽しそうな毎日を
過ごしていた。
僕もtiねこの全てが好きだったし、そして
たまに彼女と過ごせる日曜日があって
こそここまで来れたのだ。
彼女には柔らかな羽根が背中に撞いている
のだ。泣いたり笑ったり忙しかった君の事
を僕の一部にしてしまいたかった。
就職して、仕事をしている君がいつかいなくなる
事も予感として胸の奥には感じ得ていたのだ。
「航先輩、誕生石がトパーズってつまんないー。」
普段つけて楽しめばいい、とブルートパーズと
エンゲージの1ctの定番のダイヤのリングを
購入したのもこの時だ。ダミーで手渡ししたねこの
小物のクリスタルにすら喜んで腕にしがみ付いて甘えて
くれる変わらない君が忘れられなかったのだ。
嫋やかな物腰と優しい瞳、そして全てが柔い君を僕が
ずっと守るのだと誓いたかったのだ。

日曜日の恋衣 3-4

大学での3年目の夏が来た。
試験を終えるまでではなく、これから
何年もかけて、今後ずっと学問をし続ける
のだ。経験としてのバイトも今年の秋までと
心に決めていた。当然の事だ。
そんな夏の日。確か僕の誕生日だ。
「航にしか頼めないのよ。。」
カフェを経営する従妹からSNSがあり
急遽、人手の窮乏する時間に駆け付けた。
「秋までだから、仕様がないか。。」
と都電地下鉄を乗り継いで区内の駅に着いた。
午後から夕方まで土曜日だというのにバイトを
するはめになってしまったのだ。
そんな時、漆黒の黒髪の子が目の前でよろけて
いる。貧血か?持病があるのか?と冷静になった。
ふとよく見た体つきと横から覗き込む。。
tiねこさんだった。顔面は蒼白し、かなり全身から
発汗している。脱水はないだろうか。。。
「tiねこさん?」と話しかけ、背負うことはかなわないが
彼女の1ルームまで送ることになった。腕に柔らかな彼女
の感触と、湯上りのようなパウダーの匂いがしていた。
どこか懐かしく、甘美な匂いだ。。
先日も、実はtiねこさんとはこの駅で会っていた。この駅に
暮らしていることや、試験中だったので、普段の彼女がいて
飾り気のない中にも、優しい彼女の気遣いに癒されたものだ
った。
ほとんど意識すらないtiねこさんを、部屋に寝かせて、部屋も
暑くては休息出来ないから、温度調節を済ませて外から施錠して
バイト先に駆け付けたが、その時には代わりの人員も来ており
結局、従妹からの誕生日とお礼の菓子を渡され、バイトも出来た
のだ。tiねこさんは、この時から幸運を運んでくれていたのだと
感謝して止まない。。
記憶が前後したかもしれないが、このあたりに彼女に気持ちを打ち
明けてもっと知りたいと伝え、そして僕が夏の日にsyuから奪還する
ことが出来ることになったのだ。
この夏は忘れ得ない非常にいい夏の経験となった。tiねこさんの柔らか
で嫋やかな髪や、非常に縊れた腰、そして。。今もそれは変わることは
ないのだ。