その日、日野市のtiねこの実家は
大荒れ模様だった。母は困惑し、父は激怒した。
「じゃあ、知っていたんだね。」と父は母に
強い口調で攻めた。
「きちんとしてから嫁がせないとこんなことに
なるのね。。」母も後悔の色を隠せない。
「syu君はアメリカだろう、博己はどうするんだ、
鎌倉の方にも顔向けできないぞ。。」
父は怒りを露にした。ただ母は、、
「でも、子供がいるのは仕方ないじゃない、その
相手のお医者様にもお話しを伺いましょう、tiねこ
は十分悩んでいるじゃないの。。」
とたしなめた。
「そうだな。。孫は可愛い。どんな理由で生まれる
子であってもだ。」
tiねこの、あの時、出国した日の夜に一夜を過ごした
それだけの時間の中で、航先輩の子供を授かったのだ。
これから大きくなる体を説明しようがないところ
まで来ていた。。
syuが出国してから、2か月後のことだ。
博己と暮らすマンションに、航先輩が訪ねて来たのだ。
来るべき時が来たのかもしれないと先輩は言う。。
「syuと話したいんだ。連絡とれるかな?」
「今、サンディエゴは朝だろう。。朝から悪い気もするが
夜中に連絡するよりは、syuもましだろう。。」
言われるままに、スカイプを準備した。
「あれ、、航先輩じゃないか?どうしてうちにいるんだ
tiねこ?」そういうと顔を曇らせた。
「一度僕が行ってもいいし、帰国はできないのか、syu
。会って伝えなくてはいけないんだ。」
「博己かtiねこがどこか悪いのか???」
「いや、そうじゃないんだ。そうじゃない。。。」
航先輩の表情が苦悩を見せている。
結局、航先輩の夏休みに合わせて、syuが帰国する日時を
指定する事になった。
当日、tiねこと博己はこの小森林のマンションでいた。
半日して、syuと航先輩が帰宅した。。
「博己は寝たのか?」
syuは赤く充血した瞳でこっちを一瞥してそういうと
テーブルを重く叩いた。。
「どうしてだ。。」
「。。。」
「僕と博己を見殺しにする気か。。」
「言いたいことなら、僕に言ってくれないか。いま新しい命が。。」
「君の気持ちを知りたいが、安定期に入っているということはそれが
答えなんだね?tiねこ。。」
そうではないのだ。。なりたくて今の状況になったわけではない。。
「子供は関係ないわ。。」
「君はこの家の寝室にでもいなさい。」
航先輩はいうと、これからの離婚調停や示談について話を進めること
を諭した。博己君は、僕たちで引き取り育てよう、と優しく囁くのだ
が頭は混乱しきっていた。そこまで。。
数か月後、小森林のマンションはがらんとしていた。航先輩はまひるさんの時に
慰謝料をほぼなく解決してはいたが、今回は既婚者であり、tiねこは航先輩の子供
を妊娠していた事などから、慰謝料は発生したが、自分名義のsyuからの博己に
向けた今後の学資預金などを、全てsyuに返したかたちで解決できた
。実質、航先輩もtiねこも無傷に近い状態だった。
博己は、tiねこが親権を取り、養育費も一切不要としたことも、全てがマイナス
要素しかない事に、唯一プラスしたことになった。後、この件で、syuが白状した
ことが一つある。
婚姻関係の前に、syuが航先輩がtiねこへプロポーズする事を知り
連絡を数件消去していた事実だ。これを明るみにsyuが告白したことで、事態は再
転換して円満離婚となっていった事が、3人が大学の仲間で
あったこと、お互い尊重して人生を今後生きていくことにしたこと
を公に明示出来る形で終結したのだった。
「博己には、もう会えないのかな。。」悲しげにsyuが話す。
「知人として会いに来るといいさ」航先輩はそう諭す。
それから、tiねこと博己は花の森にある航先輩が見つけた
マンションへ引っ越した。お腹の子もそろそろ臨月だった
ので、全ては業者に依頼しており、後は2度目と言って
いいのか、お産を目前に控えていた。検査では女の子だった。
航先輩との子供だ。
「名前は何がいいかな。。」
最近、航さんはそればかり言いながら幸せそうに過ごしている。
仕事は相変わらず忙しく、休日や深夜夜勤など不規則さの中で
もとても尽くしてくれるので、悲しみに暮れている時間は
なく時間はさらさら優しく流れた。。